2020/06/30
CXOストーリー
世界を舞台に活躍するベンチャー経営者のマインドセットとは? スマートニュース CSO 任宜 (第2話)
「自分が圧倒的に成長できる環境に行きたい」「共感できるビジョンに向かって働きたい」「CxO・経営層を将来は目指したい」とベンチャー・スタートアップ転職に興味はあるものの、なんとなく不安を感じて一歩を踏み出せていない方も多いのではないでしょうか?
CAREEPOOLでは先駆者である「急成長スタートアップCxO」の方々へのインタビューを実施。大企業からスタートアップへ転職する際に気をつけるべきポイント、CxOに必要なスキルやマインドセット、スタートアップで働く醍醐味などについて紹介していきます。
今回はドリームインキュベータ(DI) 、DeNA Chinaを経て、ユニコーン企業として国内外で注目を集めるニュース閲覧アプリ「スマートニュース」のCSO(最高戦略責任者)任宜(にん・ぎ)氏に、目指すビジョン、キャリアで大切にしていることについて、DIの後輩でもある中山が聞きました(全3話)
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「ハードシングス」は世界共通
DI中山:日本・中国・アメリカと、グローバルマネジメントや事業立ち上げを経験されておられます。グローバルで活躍する人材になるためには何が必要でしょうか?
任:「グローバル」と言っても、言語の壁以外の「事業の本質」というものはどの国であろうとさほど変わりません。
国ごとに変わりうる物事の「ブレ幅」さえ理解できれば、あとはその「ブレ幅」があることを前提としながら勝利の条件を分析し、戦略を作っていけば良いのです。ゆえに、展開国が1から2になるときはたしかに大変ですが、2から3になるのはさほど難しくありません。
日本はグローバルマネジメントを経験している人が少ないですが、だからと言ってアメリカやヨーロッパのグローバルカンパニーの人が圧倒的に優秀かというとそうではありません。経験さえ積めば、キャッチアップ可能だと思います。
DI中山:たとえばDeNA Chinaではどのような「Hard Things」を経験されましたか?
任:私は2014年の2月から2019年3月に退職するまでの約5年間、DeNA ChinaのCEOとして本当にいろんなことを経験させてもらいました。よく七転八倒と言われますが、DeNA Chinaの場合は「七十転八十倒」くらいだったと思います(笑)。
DeNA Chinaの発足当初は、「スマホ時代のmobageをグローバルでやろう!」という意気込みで始まりました。しかし、いざ蓋をあけてみると、スマホ時代にゲームプラットフォームなんてそもそも必要が無かった。いきなり事業構想を根底から覆されてしまいました。
次に「日本のゲームタイトルを中国に!」と方向転換したわけですが、当時の中国はiPhoneが登場したものの、まだ2G回線の時代。日本のゲームをWifi環境以外で遊ぼうとすると瞬時に”パケ死”してしまうのです。ゲームそのものは無料なのに(笑)。
当然ながら、日本のゲームを中国に展開するのは無理だということで、そこから中国オリジナルのゲームタイトル開発に注力していきました。とはいえ、売上が小さいので、日本本社の開発リソースの優先順位も当然低く、現地人材採用や外部リソースを試行錯誤しながら、少しずつ成長していきました。
その過程で何十人ものリストラも経験しましたし、クローズしたゲームタイトルは数えきれません。何度も本社からの追加出資の稟議でクローズさせられそうになりましたが、なんとか危機を乗り越え、私がCEOをやっていた最後の一年では売上で約150億円・社員600名の規模まで会社を成長させることができ、なんとか黒字化まで持って行けました。
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世界を恐れるな。みんな「地球人」だ。
DI中山:中国で成功するIT企業の前例が無い中で、なぜそれらの危機を乗り越えることができたのでしょうか?グローバルで事業を成功させる秘訣を3つ挙げるとするとなんでしょう。
任:1番目に大前提として重要なのが「みんな地球人である」というマインドセット。
これだけ情報も移動もどこでも繋がりあえる現代において、グローバル化という波は避けられません。むしろ国に閉じて何かやろうとするほうが難しい。
世界に目を向けてみると、所詮人間はみんな同じであるということに気づきます。どこまでが共通で、どこが違うのか。多様性のある社会に行けばすぐわかる。なので、日本人は留学でもなんでもいいから、一度はそういった多様性のある環境に身を置いて、「みんな地球人である」ということを理解するといいと思います。
DI中山:世界どこに行こうと、「みんな地球人である」と。2つ目のポイントはなんでしょう?
任:2つ目は言語の壁。英語に関しては、「日本語よりも聞く側の許容度が圧倒的に高い」ということを理解するべきです。
英語というのは、8割が非ネイティブなので、あまり上手く話せなくても問題ありません。むしろ中身のほうがよっぽど重要です。
日本語はほぼ全員がネイティブスピーカーというある意味で英語とは真逆な言語です。日本語と英語では聞き手の許容度が違うと頭を切り替えて、コミュニケーションをすると良いでしょう。
DI中山:3つ目のポイントもお聞かせください。
任:3つ目は、国ごとの差分よりも、環境変化のスピードのほうが激しいということ。つまり、国を変えることは大した意思決定ではなく、環境変化に合わせて事業を変化させていくことのほうが重要だということです。
中期的な意思決定の際に、たとえば「①日本で既存事業をこのまま続ける」「②日本で新規事業をやる」「③違う国で新規事業をやる」という3つ選択肢があったとしましょう。
みんな①の選択肢がなんとなくあると思うから、②、③の選択肢を躊躇します。しかしこれだけ変化が激しい時代において、根本的に①という選択肢は存在しないのです。
そしてどうせ新規事業をやらないといけない場合には、どの国で始めようとゼロからのスタート。①と②の難易度の差の方が大きく、言語やコネクションといった前提条件の違いはあれど、①と②の差と比べると、②と③の差は意外に小さいと感じています。
そうなってくると、国を変えることよりも、どうやって環境変化に事業をアジャストしていくかのほうが難しく、重要であることがわかると思います。
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「10倍ゲーム」を勝ち抜く
DI中山:グローバル化は避けられない、むしろ環境変化への対応スピードが重要であるというメッセージかと思います。DeNA Chinaが外資IT企業の成功例が無い中で成功できたのも、やはり環境変化に対応できたからということでしょうか?
任:そうですね、大前提として中国の事業を現地に任せてくれたのが、刻一刻と変わる中国マーケットで成功できた要因だと思います。
とはいえ、最初の頃はなかなか信じてもらえませんでした。本社の取締役への報告会も毎回大変でしたね。だって、日本が月間30億円以上売上をあげていた時期に、同じタイトルを中国で展開したときの初月売上はいくらだったと思いますか?
DI中山:3,000万円、くらいでしょうか?
正解は3万円です。もはや取締役が集まる報告会実施コストのほうが高いですよね(笑)。
事業というのはステップごとで「10倍ゲーム」の競争だというのが私の持論です。3万円から30万円、300万円、3000万円と大きくしていく。それぞれのステップごとで、必要となる戦略が異なります。
月商数千万円レベルまでは日本のアプリをローカライズしていましたが、はじめて億を突破したのは「NBA My Dream」という中国オリジナルタイトルをリリースしたタイミングでした。
そして次のステージでは日本の「有名IP×中国オリジナルタイトル」を仕掛けた。私が社長に就任したのはこのタイミングだったので、私が最初に下した意思決定が「一番売れているNBA My Dreamのプロデューサーを異動させて、新タイトルを作らせる」というもの。
ようやく億単位のビジネスができるようになったメンバーからすれば、「せっかくうまくいき始めたのに何故?」と思ったでしょう。でも「10倍」を目指すには必要な意思決定だったのです。
ステージごとで必要な戦略や人材は必ず変わっていく。そのステージごとで、時には厳しい意思決定をすることが経営者には求められます。
DI中山:そしてその「環境変化対応力」は、国が変わろうが本質は変わらない、と。
そうですね。私が子供の頃の中国と日本にはすごい差があったけれど、今は似てきている。同様に、どんどん世界が似てきているのを感じます。
どの国に行こうが「みんな地球人」であり、事業の本質は変わらない。その意識が、グローバルマネジメントには求められると思います。
>第3話「日本発スタートアップが本気で「世界No.1」を目指す スマートニュース CSO 任宜」に続く(6月下旬予定)
筆者 :
中山航介
上智大学経済学部卒業後、新卒でDI参画。大企業向けコンサルティングでの戦略策定、事業投資先への出向(データベース運用・分析)を経て、国内ベンチャー投資を担当。学生時代には、国内外スタートアップ、メガベンチャーでのインターンを数社経験。
筆者 :
中山航介
上智大学経済学部卒業後、新卒でDI参画。大企業向けコンサルティングでの戦略策定、事業投資先への出向(データベース運用・分析)を経て、国内ベンチャー投資を担当。学生時代には、国内外スタートアップ、メガベンチャーでのインターンを数社経験。