CXOストーリー

外資系コンサル、ITメガベンチャーを経てスタートアップ経営者に転職。SmartHR COO倉橋隆文のキャリア(第2話)

外資系コンサル、ITメガベンチャーを経てスタートアップ経営者に転職。SmartHR COO倉橋隆文のキャリア(第2話)

「自分が圧倒的に成長できる環境に行きたい」「共感できるビジョンに向かって働きたい」「CxO・経営層を将来は目指したい」とベンチャー・スタートアップ転職に興味はあるものの、なんとなく不安を感じて一歩を踏み出せていない方も多いのではないでしょうか?

CAREEPOOLでは先駆者である「急成長スタートアップCxO」の方々へのインタビューを実施。大企業からスタートアップへ転職する際に気をつけるべきポイント、CxOに必要なスキルやマインドセット、スタートアップで働く醍醐味などについて紹介していきます。

今回は人事労務の業務をクラウド化して負担を軽減する注目の企業、SmartHRでCOOを務める倉橋隆文さんに、ベンチャーにおけるCOOの役割や求められる素養についてお伺いします。(全3話)

MBA留学を経て気づいた「実行力」の大切さ

ーー今回は倉橋さんのこれまでのキャリアについてお聞かせいただけますでしょうか?

 

私は、学生時代はもともと研究者志望でした。修士で理学部の物理学を専攻し、将来は研究の道に進む気満々だったんです。

 

しかしながら実際に修士に入って研究三昧の日々を経験するにつれ、自分には研究者が向いていないと感じ、ビジネスの進路に興味を持つようになりました。そして就職活動で「お前は論理的な性格だから、コンサルが向いている」と友人に言われ、説明会に行ったのがコンサルティング会社のマッキンゼーに入社したきっかけです。

 
実際にマッキンゼーでの仕事は非常に知的成長が感じられて好きでした。そして、2年半勤めたタイミングで、1度外の世界も見てみようと思い、社費でハーバード・ビジネススクールのMBA留学にも行きました。

 

留学を決めた時点では、留学後は戻ってコンサルティングの仕事を続ける気でいたのです。

 

 

ーーしかし帰国後に楽天に入社を決められます。何か心境の変化があったのでしょうか?

 

留学中の「ケースメソッド」と呼ばれる対話型の授業を通じて、毎日のように「自分が経営者だったらこの局面をどう乗り越えるか?」という経営の擬似体験をしました。

 

そこで学んだのは、アメリカで成功しているスタートアップの約90%は最初の事業計画からピボットしているということ。実際は当初のプランニング通りに物事は進まないし、市場のリアクションや内部・外部環境を照らし合わせながら、人の力を結集してプロジェクトを進めていく「実行力」が価値の大半を占めると気づきました。

 

コンサルティングの仕事は2、3ヶ月かけてクライアントに事業提案をする「プランニング」に重きがあるのに対して、経営者として事業の成否を決めるのは実際にプランをどのように「実行」するかの部分。結果の振り返りをせずにプランニングだけを繰り返すのは偏っているのではないかと感じるようになったのです。

 

そこから、プランニングから実行まで全てに携われる経営者を志すようになりました。帰国後、留学費を会社に全額返済し、楽天に転職。経営者として自分に足りていない「実行力」の部分を伸ばそうと考えたのです。

 

 

ーー楽天を選ばれたのはなぜでしょう?

 

ITが好きだったので、伸びているIT企業を中心に見ていました。その中でも比較的泥臭い「実行力」が秀でているイメージのある楽天に入ろうと思いました。代表の三木谷さんが私と同じハーバード・ビジネススクールのOBで、お話させていただく機会があったことも最終的な決め手になりましたね。

 

楽天の最終面接では「営業から始めさせてください」と言いました。留学中に「将来経営者になりたいが、どうしたらいいと思うか」と教授に相談したところ、「営業からやれ。若いうちしか身に付けられない力もあるから」とアドバイスされていたからです。

 

しかしながら、実際に配属されたのは社長室でした(笑)。楽天に入社後1年半ほどは社長室として、新規事業や大型買収など様々な社長直下プロジェクトに携わりました。

 

ただ、実際に事業を間近で見ることはできるものの、社長室の仕事は社内コンサル的な色合いが強かった。なので入社から1年ほどしたときに、三木谷さんに「私は実業をやるために入りました。現場でやらせてください。」と直談判しました。

 

そして実際に半年後には海外子会社の社長に任命されました。そこで初めて戦略から実行まで、すべての結果に対して責任を持つ経営者の経験をしました。辛い経験もたくさんしましたが、私に不足していた「実行力」はその頃に養われたように思います。

 

 

子会社社長としての挫折、そして学び

子会社社長としての挫折、そして学び

ーー楽天の子会社社長時代に学んだことについて具体的にお聞かせください。

 

社長を経験して1番痛感したのは「チームの大切さ」です。

 

当然ながら社長1人では何もできないので、チームに協力してもらう必要があります。チームは上手くいけばパワフルに物事を推進しますが、上手くいっていないチームでは逆に問題が多発します。

 

私は人のマネジメント経験が無い中、いきなり日本人が1人もいない50人規模の会社の社長になりました。前任社長が退任して親会社から私が就任するといういわゆる「立て直し案件」だったのですが、結果的には従業員を1/4程度レイオフして事業をソフトランディングさせるという、理想からは遠い悔しい結果になりました。

 

自分のコミュニケーション不足によって、いろんな人の人生に影響を与えてしまった。その結果もひとえに「チーム」を作り、率いることにおける自分の実力不足が原因だったと思います。

 

 

ーーいまその挫折経験を振り返ってみて、「チーム」を率いる上で重要なことはなんだとお考えでしょうか?

 

まずは「共通目標の認識と共有」。

 

議論をする上で、お互いが前提として共通目標を共有できていれば健全なのですが、目標共有もなく単にぶつかりあっているだけだと何も生まれません。

 

次に「互いの認識と立場への理解」。

 

同じ事柄でも見る角度や立場によって見え方は異なります。お互いが正しいことを言っていても、意見が対立してしまうことがあるものです。そんな状況下で経営者として意思決定するときに気をつけるべきなのは、多方面から情報を集めること。そして、決定を一方的に伝えるのではなく、互いの認識と立場への理解を示すことです。

 

これに関しては子会社社長時代に苦い経験をしました。会社の戦略転換について一方的に発表したら、1週間のうちに4人から辞表を出されてしまったのです。

 

この失敗から学び、いまは衝突しそうな意思決定をするときは「納得できない部分もあるだろうけど、こういう理由で、こう決めさせて。ごめんね」と事前に言うようにしています。そうやって互いの立場へ理解を示し、意思決定に対しての説明責任を果たすことが、チームの納得感を高めるのです。

 

最後にチームをまとめる上で大切だと思っているのが「顔を合わせる」こと。

 

人間には「見えないものに対して共感できない」という特性があります。理論上はリモートでも成り立つものが、上手くいかなくなったりするのです。

 

SmartHRで部活制度や週に1回のランチ会などの制度を作っているのも、そうやって「顔を合わせる」ことが大事だと思っているからです。

 

これらの学びが、今の仕事におけるコミュニケーションでも役に立っています。

 

 

ベンチャーへの転職時は会社を徹底的に見極めよ

ベンチャーへの転職時は会社を徹底的に見極めよ

ーーマッキンゼー、MBA留学、楽天を経て、2017年にSmartHRにジョインされました。なぜベンチャーの世界へ飛び込もうと思われたのでしょうか?

 

楽天で新規事業を担当させていただく中で「世の中に無い新しいものを作る」ことの楽しさを知りました。そして元来経営者になりたいと思っていたので、ベンチャーの経営陣としてキャリアを進めようと決めました。

 

ベンチャーの経営陣としていくつかオファーをいただいた中で、最終的にSmartHRに決めた理由は2つです。

 

1つめは「事業」。前職までの経験から、事業の見極めには知見がありました。転職を決めるときも、さながらデューデリジェンスにおける経営指標を共有してもらったり、マネジメントインタビューのように、根掘り葉掘り事業について聞いたんです。

 

SmartHRの事業はまさに急成長をし始めたフェーズで、なおかつ「労働人口の減少」という日本の深刻な社会課題に対して、生産性向上によって貢献する事業価値を持っている。事業の「成長性」と「社会意義」に確信を持つことができました。

 

2つめが「カルチャー」。

 

組織の雰囲気がズバ抜けて良く、非常に働きやすい環境だと感じました。また、代表の宮田からは「倉橋さんが入ったらビジネスサイドは任せます」と言ってもらえました。宮田はワンマン社長の真逆を行くような珍しいタイプの社長で、経営者として裁量と責任を持ちたい私のような人間には本当にありがたい存在なのです。

 

この「事業」と「カルチャー」を軸にしてSmartHRを選びました。実際に今はビジネスについて一任してもらっていて、入社時の見極めに間違いは無かったと感じています。

 

 

>第3話「ベンチャーCOOに必要な3つの素養。「COOが誰よりも成長に貪欲であるべき」の理由とは SmartHR COO倉橋隆文」に続く(3月下旬予定)

 

平重 克樹

筆者 : 

平重 克樹

感性デザイン工学専攻で大学院修了後、株式会社NTTドコモに入社。NTTドコモでは、IoT/AIを軸とした、デバイス・アプリケーションの両面から経営課題にアプローチするビジネスコンサルティング業務に従事。建設業界の働き方改革・生産性向上に寄与するIoTソリューション事業(デジタルトランスフォーメーション:DX)の新規立ち上げを行う。また同時に、オープンIoTプラットフォームを展開する4社JVのインキュベーション支援業務に携わる。MWC Barcelona 2018・2019出展。 その後、株式会社ドリームインキュベータ(DI)に出向。DIでは国内ベンチャー投資・上場支援に取り組む。また、国内1号ファンド「DIMENSION」の立ち上げに関わる。

平重 克樹

筆者 : 

平重 克樹

感性デザイン工学専攻で大学院修了後、株式会社NTTドコモに入社。NTTドコモでは、IoT/AIを軸とした、デバイス・アプリケーションの両面から経営課題にアプローチするビジネスコンサルティング業務に従事。建設業界の働き方改革・生産性向上に寄与するIoTソリューション事業(デジタルトランスフォーメーション:DX)の新規立ち上げを行う。また同時に、オープンIoTプラットフォームを展開する4社JVのインキュベーション支援業務に携わる。MWC Barcelona 2018・2019出展。 その後、株式会社ドリームインキュベータ(DI)に出向。DIでは国内ベンチャー投資・上場支援に取り組む。また、国内1号ファンド「DIMENSION」の立ち上げに関わる。