CXOストーリー

目指すは「チーフファイヤーファイター」!?五常・アンド・カンパニーCFO 堅田航平が考える「CFOの役割」(第5話)

目指すは「チーフファイヤーファイター」!?五常・アンド・カンパニーCFO 堅田航平が考える「CFOの役割」(第5話)

「自分が圧倒的に成長できる環境に行きたい」「共感できるビジョンに向かって働きたい」「CxO・経営層を将来は目指したい」とベンチャー・スタートアップ転職に興味はあるものの、なんとなく不安を感じて一歩を踏み出せていない方も多いのではないでしょうか?

CAREEPOOLでは先駆者である「急成長スタートアップCxO」の方々へのインタビューを実施。大企業からスタートアップへ転職する際に気をつけるべきポイント、CxOに必要なスキルやマインドセット、スタートアップで働く醍醐味などについて紹介していきます。

今回はDIMENSIONも含めた投資家から42.2億円のシリーズC資金調達を発表し、「民間版の世界銀行」を目指す五常・アンド・カンパニー株式会社CFOの堅田航平さん。ライフネット生命、スマートニュースなど、名だたるスタートアップで財務責任者やCFOを務めてきた同氏にお話を伺います。(全5話)

会社に必要ならば「何でもやる覚悟」がある

ーーCFOの素養として「未来への想像力」(第1話リンク)が大切とおっしゃっていました。五常・アンド・カンパニーに入社された今、描いている未来についてお聞かせください。

 

「未来を想像」するのって本当に難しいんですよね。でも「過去の失敗」から学ぶことはできます。

 

例えば最近だと「WELQ問題」ってありましたよね。あれを人ごとだと思うのは簡単ですが、あの第三者委員会調査報告書には起こりうる様々なリスクが具体的に書かれていて、全てのベンチャーCFOが読むべきエッセンスが詰まっています。

 

また、私はITバブルの直後に投資銀行に就職して入社半年で部門の人員が半分になり、ヘッジファンドに移った直後にライブドアショックがあり、ライフネット生命に入社した半年後にリーマンショックが起こりました。金融は経済活動の血液とよく言われますが、本当にお金の流れが止まることの怖さも体験しています。

 

市場のウインドウ(窓)はいつまで開いているか分からないし、今の延長線上に未来は無いことが多い。様々な未来のシナリオを考え抜き、その上でこの会社はどうすべきなんだろうと考えることが「未来への想像力」です。

 

 

ーー堅田さんはCFOという肩書き、役割に終始固執していないのが印象的です。

 

経営チームというのは大きな目標を共有し、それをどう達成するか考え、意思決定していく集団です。そう捉えた時に、経営チームの中で「役割分担」すると言うのは耳障りは良いけれど、行き過ぎると互いに領域を決めて干渉し合わない不健全な状態にもなり得ます。

 

私は目標を達成するために必要なら、営業でもリストラでも、何でもやる覚悟があります。限られた経営チームのリソースの中で、誰がやるのが最適なのか考えた時に自分が適任なのであれば、何でも喜んでやるというのが基本的スタンスです。

 

実際にはファイナンスや経営管理関連の仕事が多いですが、組織や業務プロセスなど、あらゆる場面のトラブルや揉め事の鎮火を請け負う「チーフファイアーファイター」くらいの気持ちでいますね。

 

 

ーー経営チームの成長が組織の成長を決めるからこそ、自分の領域を決めてはいけないということですね。

 

当たり前の話ですが起業家は意思決定者として事業・組織について深く考え抜き、多くの修羅場をくぐり抜けて、どんどんと成長していきます。経営メンバーと経営トップの間には、本来的に乗り越え難い大きなギャップが存在していることを常に意識しないと、どんどん引き離されていってしまうのです。

 

だからこそ経営チームは、自らの責任分野を固定しすぎず、互いのあるべき姿に対して率直に言いあえる関係性がないといけない。「お前ができないなら俺がやる」「領空侵犯上等!」くらいの組織の方が強いし、そういうチームで働く方が楽しいと思いますね。

 

 

ーー「誰もが自分の未来を決めることができる世界をつくる。」というビジョンにのみ、五常・アンド・カンパニーの経営チームは向かわれているのですね。

 

私は満足の閾値が低い人間なので、あまり普段の生活で不満が無いのですが、唯一許せないのが「生まれ持った不公平」です。

 

これは私に子供ができたり、家族が大きな病気をしたりしてより強まった意識でもあるのですが、子供は生まれる国や親を選ぶことはできません。そして残念ながら、生まれてきた環境によって大きな不公平が生じているのが現実です。

 

世の中の「原理的に避けられない不平等」を少しでも小さくしていきたい。そのために自分の人生の残り時間を費やしていきたいと考えています。

 

 

「スタートアップ」という会社は存在しない。「自分の道」を進もう。

ーーでは最後に、ベンチャーへの転職、将来は堅田さんのようなキャリアを目指されている皆さんにメッセージをお願いします。

 

ここ数年、好調な資金調達環境と相まって、スタートアップへの人材流入が加速しているはとても喜ばしいことですが、特に財務・管理の場合、実際には非常に地味で泥臭い仕事ばかりで、普通に考えれば割に合いません(笑)

 

「ベンチャーのCFOになりたいです」とか「スタートアップに行きたいです」と相談されることもあるのですが、そういうときは、まずは「事業やプロダクトが本当に好き」「この経営者のビジョンに強く共感する」のどちらか、できれば両方が揃っているか考えるように促しています。

 

「スタートアップ」という会社は存在しません。同様に「CFO」という仕事も存在しない。本当に自分がやりたいこと、一緒に働きたい人を見極めることを大切にしてチャレンジして欲しいと思います。

 

 

ーー堅田さんが良きロールモデルとして、これまでのキャリアでも体現されてきた通りの判断軸ですね。

 

ロールモデルという話を最後にすると、私にとってのロールモデルの一人は、本田技研工業で本田宗一郎さんの女房役としてご活躍された藤沢武夫さんです。

 

本田宗一郎さんは周知の通り、プロダクトの人であり、ビジョナリーであり、ヒューマニストでもあるカリスマ経営者。一方で藤沢さんは本田さんの参謀役として、「プロダクトを作ること以外は全部やる」人だったと聞いています。

 

彼の書いた「松明は自分の手で」という本が私にとってのバイブルになっています。「前をいくものの明かりについていくのではなく、自分の手で松明を持って暗闇の中の新しい道を進もう」という趣旨の言葉なのですが、彼の経営観や仕事に対する考え方は本当に勉強になります。

 

藤沢さんは本田さんと一緒に世界のホンダを創り、最後は同じ日に引退します。引き際までかっこよすぎて、憧れちゃいますよね。

 

 

ーー五常・アンド・カンパニーの慎さん、そして堅田さんが名コンビとしてさらに活躍されることを楽しみにしています。

 

五常・アンド・カンパニーは50カ国1億人に金融サービスを届けるという非常に時間のかかる大きなゴールを目指しています。そのためには、学習し成長し続ける組織を作り上げていかなければいけません。

 

そのためには、まずは私も慎と同じ目線で経営判断ができるようにならなければいけない。藤沢さんはまだ遠すぎる存在で焦るばかりですが、私たちなりの経営チーム、組織を作っていきたいと思っています。

 

平重 克樹

筆者 : 

平重 克樹

感性デザイン工学専攻で大学院修了後、株式会社NTTドコモに入社。NTTドコモでは、IoT/AIを軸とした、デバイス・アプリケーションの両面から経営課題にアプローチするビジネスコンサルティング業務に従事。建設業界の働き方改革・生産性向上に寄与するIoTソリューション事業(デジタルトランスフォーメーション:DX)の新規立ち上げを行う。また同時に、オープンIoTプラットフォームを展開する4社JVのインキュベーション支援業務に携わる。MWC Barcelona 2018・2019出展。 その後、株式会社ドリームインキュベータ(DI)に出向。DIでは国内ベンチャー投資・上場支援に取り組む。また、国内1号ファンド「DIMENSION」の立ち上げに関わる。

平重 克樹

筆者 : 

平重 克樹

感性デザイン工学専攻で大学院修了後、株式会社NTTドコモに入社。NTTドコモでは、IoT/AIを軸とした、デバイス・アプリケーションの両面から経営課題にアプローチするビジネスコンサルティング業務に従事。建設業界の働き方改革・生産性向上に寄与するIoTソリューション事業(デジタルトランスフォーメーション:DX)の新規立ち上げを行う。また同時に、オープンIoTプラットフォームを展開する4社JVのインキュベーション支援業務に携わる。MWC Barcelona 2018・2019出展。 その後、株式会社ドリームインキュベータ(DI)に出向。DIでは国内ベンチャー投資・上場支援に取り組む。また、国内1号ファンド「DIMENSION」の立ち上げに関わる。