CXOストーリー

累計76億円調達の五常・アンド・カンパニーCFO 堅田航平が語る「ベンチャーCFOに求められる3つの素養」(第2話)

累計76億円調達の五常・アンド・カンパニーCFO 堅田航平が語る「ベンチャーCFOに求められる3つの素養」(第2話)

「自分が圧倒的に成長できる環境に行きたい」「共感できるビジョンに向かって働きたい」「CxO・経営層を将来は目指したい」とベンチャー・スタートアップ転職に興味はあるものの、なんとなく不安を感じて一歩を踏み出せていない方も多いのではないでしょうか?

CAREEPOOLでは先駆者である「急成長スタートアップCxO」の方々へのインタビューを実施。大企業からスタートアップへ転職する際に気をつけるべきポイント、CxOに必要なスキルやマインドセット、スタートアップで働く醍醐味などについて紹介していきます。

今回はDIMENSIONも含めた投資家から42.2億円のシリーズC資金調達を発表し、「民間版の世界銀行」を目指す五常・アンド・カンパニー株式会社CFOの堅田航平さん。ライフネット生命、スマートニュースなど、名だたるスタートアップで財務責任者やCFOを務めてきた同氏にお話を伺います。(全5話)

CFOの基本は「インテグリティ」

ーーまさに「シリアルCFO(連続CFO)」といえるほど、様々な経験・実績のある堅田さんが考える、ベンチャーのCFOにとって重要な素養を3つ挙げるとするとなんでしょうか?

 

CFOの役割は経営者、経営チーム、会社のステージ、業種業態によってまったく異なります。

 

無理やりそれらを「主に財務を軸に経営を担う人」だと定義すると、1つめは「インテグリティ(誠実さ)」、2つめが「人と組織への想像力」、3つめが「未来への想像力」です。

 

 

ーー1つめの「インテグリティ」について詳しくお聞かせください。

 

もう少し詳しく言うと「インテグリティに基づき信頼関係を構築する力」です。

 

無形の商品を扱う金融サービス業においては、お客様や社員、株主、業務委託先など、ステークホルダーと呼ばれる人々との信頼関係無くして掲げたビジョンの実現はありえません。

 

いかなる時も「ステークホルダーから信頼され続ける会社になる」という部分を担保する気概がCFOには求められます。

 

 

ーー「信頼関係を構築する力」はどのようにして身につくものでしょうか?

 

信頼は築き上げることは非常に難しく、失うのは一瞬です。たとえば上場企業であれば、一度でも株主の信頼を毀損するようなことをすると、そこから株価を回復させるのは本当に難しいものです。

 

信頼を築くためには、当たり前のことですが「嘘をつかない」「対外的に説明できないようなずるいことをしない」「首尾一貫・言行一致」といった姿勢を貫くことしかありません。

 

信頼は目に見えないものだからこそ、自らと組織を「インテグリティ」で律して行動することが大切なのだと思います。

 

 

目の前の「人・組織」に想像力を働かせる

ーー素養の2つめ「人と組織への想像力」についてもお聞かせください。

 

人がどういう原理で動いていて、何がモチベーションなのか。組織がどういう仕組みになっていて、どういうステークホルダーが関係しあっているのか。

 

これらをちゃんと動的に理解するということが「人と組織への想像力」を持つということです。ステークホルダーと信頼関係を作るコミュニケーションにおいても非常に重要となります。

 

自分が伝えたいことだけを伝えるのはコミュニケーションではありません。相手が内容を理解して、こちらが求めるような行動変容・思考転換をしてくれて初めてコミュニケーションが成立したと言えます。

 

相手の思考への「想像力」を働かせ、傾聴し、適切な言葉を選んでコミュニケーションをする力が、「人や組織」を動かすために必要だと思います。

 

 

ーー「人と組織への想像力」はどのように身につけられましたか?

 

1つめの原体験は、大学時代に所属したアイセック(AIESEC)でのリーダー経験です。

 

アイセックは無報酬の学生メンバーによって運営される非営利組織なので、ミッション・ビジョンへの共感を軸に、給料を払っていないメンバーを継続的にモチベートして働いてもらう必要があります。これは見方によっては、報酬を払って働いてもらうよりもはるかに難しいことです。しかも全員学生ですので、みんなだいたい失敗します。

 

私もその例外ではなく、チームが解散してしまうなど、失敗をたくさんしました。「自分はこんなに考えているのに、なんでわかってくれないんだ」と意固地になったり、「伝わらないのは相手が悪いからだ」と他責してしまったり。

 

でもそれらの失敗経験を通して「人や組織への想像力」の土台みたいなものが磨かれたように思います。

 

もう1つの原体験は、ライフネット生命の創業者である出口治明さんとの出会いです。

 

彼は何かを発言するときに、「この人はこういうバックグラウンドで、こういうステークホルダーが周りにいるから、こう伝えよう」といったように、人の感情やインセンティブ、その裏にあるコンテクストまで含めて見抜くのが非常に巧みでした。

 

出口さんからは組織のダイナミズムや人に対する理解、様々な角度から物事を見ることの大切さを教えていただきました。

 

 

ーー様々な角度からの視点を持つために、意識して実践されていることはありますか?

 

出口さんは「タテヨコ思考」とよく言っていましたが、物事を見るときに一つの思考軸は「タテ」に歴史を遡って学ぶこと。そうすると、人間もしょせんは動物なので、現代に通じる行動原理、組織原理みたいなものが見えてきます。もう一つは「ヨコ」に他の国や業界で起きていることを観察すること。そうすれば自分の領域との差分からヒントが得られます。

 

加えて、私の場合は基礎を体系的に学ぶため、組織開発やコーチングを勉強するためにビジネススクールの単科コースを受講したり、HR領域のコミュニティや勉強会に入ったりしていました。ライフネット生命では採用や人事評価制度の設計にも関与していましたので、学んだことを実践し、修正しながら自分なりの方法論を築くことができたのかなと思います。

 

 

ーーファイナンスだけでなく、「人・組織」についても学び、試行錯誤を繰り返されたのですね。

 

ファイナンスと決定的に違う部分は「人は理屈だけでは動かない」ということ。「論理・感情・インセンティブ」を正しく設計・伝達しないと人・組織は動きません。

 

ファイナンスよりもソフトな世界なので、これをやれば良いという正解が無いのが「人・組織」の世界。常にアンラーニングしながら、目の前の人・組織に「想像力」を働かせ続けることを大切にしています。

 

 

目指すべきは「チーフ “キャピタル” オフィサー」

ーー素養の3つめ、「未来への想像力」についてお聞かせください。

 

これは必要な資本を、必要なタイミングで、適切なところから調達して事業に投資し役立てていく。言い換えれば、「資本コストを超えたリターンを出し、株主価値を創造していく」ための素養です。

 

資本コストは不確実性(リスク)の高さに対応するので、将来的キャッシュフローの蓋然性が高ければ、資本コストは下がっていきます。キャッシュフローの蓋然性を高めるためには、しっかりとした戦略を作ることに加え、戦略の阻害要因となるリスクを取り除いていくことが求められます。

 

ここで必要になるのが「未来への想像力」です。

 

未来のキャッシュフローに対して、ダメージを与えるようなものが何なのかを想像する。そうすることでリスクを事前に取り除き、資本コストを下げることができるのです。

 

 

ーー「未来への想像力」はどのようにして身につけられたのでしょうか?

 

投資をする立場になったこともあれば、投資銀行で資金を融通する立場、スタートアップで投資を必要とする立場になったこともあります。一貫性がないようにも見えますが、キャリアを通してそれぞれの視点で金融を見てきたからこそ、自分なりに未来を想像することができているのかもしれません。まだまだ勉強中ですが。

 

これまでお話しした素養ともつながりますが、会社の資本には「フィナンシャル・キャピタル(財務的資本)」と「ヒューマン・キャピタル(人的資本)」があります。この両輪が揃って初めて事業が成長していくのです。

 

なので両方を扱えるのがベストですし、CFO(チーフフィナンシャルオフィサー)よりもCCO(チーフキャピタルオフィサー)のほうが大きな価値を生み出せる。そんな存在を目指して、今も自己研鑽を続けています。

 

 

>第3話「五常・アンド・カンパニーCFO 堅田航平の原点。学生時代のマイクロファイナンスとの出会い、そして挫折」に続く(2月上旬予定)

 

平重 克樹

筆者 : 

平重 克樹

感性デザイン工学専攻で大学院修了後、株式会社NTTドコモに入社。NTTドコモでは、IoT/AIを軸とした、デバイス・アプリケーションの両面から経営課題にアプローチするビジネスコンサルティング業務に従事。建設業界の働き方改革・生産性向上に寄与するIoTソリューション事業(デジタルトランスフォーメーション:DX)の新規立ち上げを行う。また同時に、オープンIoTプラットフォームを展開する4社JVのインキュベーション支援業務に携わる。MWC Barcelona 2018・2019出展。 その後、株式会社ドリームインキュベータ(DI)に出向。DIでは国内ベンチャー投資・上場支援に取り組む。また、国内1号ファンド「DIMENSION」の立ち上げに関わる。

平重 克樹

筆者 : 

平重 克樹

感性デザイン工学専攻で大学院修了後、株式会社NTTドコモに入社。NTTドコモでは、IoT/AIを軸とした、デバイス・アプリケーションの両面から経営課題にアプローチするビジネスコンサルティング業務に従事。建設業界の働き方改革・生産性向上に寄与するIoTソリューション事業(デジタルトランスフォーメーション:DX)の新規立ち上げを行う。また同時に、オープンIoTプラットフォームを展開する4社JVのインキュベーション支援業務に携わる。MWC Barcelona 2018・2019出展。 その後、株式会社ドリームインキュベータ(DI)に出向。DIでは国内ベンチャー投資・上場支援に取り組む。また、国内1号ファンド「DIMENSION」の立ち上げに関わる。